(平均律における)音階と周波数比について。等比数列,累乗根という数学の基本的な道具が登場します。
音階と周波数(平均律)
ある「ド」の音の周波数を $f$ とすると,その1オクターブ上の「ド」の音の周波数は $2f$ になります。そして,その間を(比の意味で)12等分し,間の音を定めます。公比が $\sqrt[12]{2}$ の等比数列です!
音階 | 周波数 | 近似値 |
---|---|---|
ド | $f$ | $f$ |
ド♯(レ♭) | $\sqrt[12]{2}f$ | $1.059f$ |
レ | $(\sqrt[12]{2})^2f$ | $1.122f$ |
レ♯(ミ♭) | $(\sqrt[12]{2})^3f$ | $1.189f$ |
ミ | $(\sqrt[12]{2})^4f$ | $1.260f$ |
ファ | $(\sqrt[12]{2})^5f$ | $1.335f$ |
ファ♯(ソ♭) | $(\sqrt[12]{2})^6f$ | $1.414f$ |
ソ | $(\sqrt[12]{2})^7f$ | $1.498f$ |
ソ♯(ラ♭) | $(\sqrt[12]{2})^8f$ | $1.587f$ |
ラ | $(\sqrt[12]{2})^9f$ | $1.682f$ |
ラ♯(シ♭) | $(\sqrt[12]{2})^{10}f$ | $1.782f$ |
シ | $(\sqrt[12]{2})^{11}f$ | $1.888f$ |
ド | $2f$ | $2f$ |
和音
複数の音を同時にならす「和音」について考えます。それぞれの音の周波数が簡単な整数比で表されるときに心地よいと感じると言われています(これは認めてしまいます)。
例えば,有名な和音「ド,ミ,ソ」について考えてみます。3つの音の周波数比は,おおよそ $1:1.260:1.498\simeq 4:5:6$ と簡単な整数比になっています!
「ファ,ラ,ド」「ソ,シ,レ」なども同じ周波数比です。(等比数列なので,それぞれの音を平行移動させても周波数比は変わらない)
ピアノの鍵盤
ピアノではミとファの間,シとドの間には黒い鍵盤がありません。これは,12音のうち,よく使う7つの音(ドレミファソラシド)を手前に持ってきているからです。
実際「ドレミファソラシド」は(ほぼ)それなりに簡単な整数比で表すことができます。
音階 | 周波数 | 近い簡単な有理数 |
---|---|---|
ド | $f$ | $f$ |
レ | $(\sqrt[12]{2})^2f$ | $\frac{9}{8}f$ |
ミ | $(\sqrt[12]{2})^4f$ | $\frac{5}{4}f$ |
ファ | $(\sqrt[12]{2})^5f$ | $\frac{4}{3}f$ |
ソ | $(\sqrt[12]{2})^7f$ | $\frac{3}{2}f$ |
ラ | $(\sqrt[12]{2})^9f$ | $\frac{5}{3}f$ |
シ | $(\sqrt[12]{2})^{11}f$ | $\frac{15}{8}f$ |
ド | $2f$ | $2f$ |
なお,ドレミファソラシドは等間隔ではなく,間隔は
全音,全音,半音,全音,全音,全音,半音
です(比の意味で $\sqrt[12]{2}$ の間隔を半音,$(\sqrt[12]{2})^2$ の間隔を全音と呼びます)。
中学校や高校の音楽の授業で,2の12乗根とか登場させてほしいですね。
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