対称式に関するマクローリンの不等式
マクローリン(Maclaurin)の不等式 $n$ 変数 $k$ 次の基本対称式を ${}_n\mathrm{C}_k$ で割ったものを $d_k$ とする。このとき, $d_1\geq d_2^{\frac{1}{2}}\geq d_3^{\frac{1}{3}}\geq\cdots\geq d_n^{\frac{1}{n}}$...
View Articleフランダースの不等式とその証明
フランダース(Flanders)の不等式: 任意の三角形 $ABC$ について, $\sin A\sin B\sin C\leq\left(\dfrac{3\sqrt{3}}{2\pi}\right)^3ABC$ Abi-Khuzam の不等式とも言います。右辺の $ABC$ は,角 $A$,角 $B$,角 $C$ それぞれの(弧度法での)大きさの積という意味です。角度とその $\sin$...
View Article有限体(ガロア体)の基本的な話
位数(要素数)が $q$ の有限体が存在する $\iff$ ある素数 $p$ と正の整数 $n$ が存在して $q=p^n$ 有限体とは 位数が有限である体を有限体(またはガロア体)と言います。大雑把に言うと,四則演算ができる有限集合のことです。 位数が $q$ である有限体(実は,同型を除いて一通りに定まる)を $F_q$,$GF(q)$ などと表記します。 $GF(2)$ 具体例として,位数が...
View Article楕円の接線を求める公式とその証明
楕円 $\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$ 上の点 $P(x_0,y_0)$ における接線の方程式は, $\dfrac{x_0x}{a^2}+\dfrac{y_0y}{b^2}=1$ 楕円の接線を求める公式について 楕円の方程式において $x^2\to x_0x$,$y^2\to y_0y$ とするだけなので覚えやすいです。 $a=b$...
View Articleボールウェイン積分
$0$ 以上の整数 $n$ と,$\displaystyle\sum_{k=1}^n|a_k|\leq 1$ を満たす実数 $a_1,\cdots, a_n$ に対して, $\displaystyle\int_0^{\infty}\dfrac{\sin x}{x}\left(\prod_{k=1}^n\dfrac{\sin a_kx}{a_kx}\right)dx=\dfrac{\pi}{2}$...
View Articleルモアーヌ点(類似重心)とその性質
三角形 $ABC$ において,「中線を角の二等分線に関して折り返した直線」は $3$ 本あるが,それらは $1$ 点で交わる。 この点をルモアーヌ点(類似重心,Symmedian Point,Lemoine Point)と言う。 ルモアーヌ点の存在証明 より一般に,以下の定理が成立します。 三角形 $ABC$ と点 $P$ がある。 角の頂点を通る直線 $l$ と角の二等分線に関して対称な直線...
View Article円分多項式とその性質
$\zeta_n=e^{\frac{2\pi i}{n}}=\cos \dfrac{2\pi}{n}+i\sin\dfrac{2\pi}{n}$($n$ 乗して $1$ になる数のうちの一つ)とおく。多項式 $F_n(x)=\displaystyle\prod_{k\in A_n} (x-\zeta_n^k)$ を円分多項式(円周等分多項式)と言う。 ただし,$A_n$ は $1$ 以上 $n$...
View Article原始関数の定義といろいろな例
微分すると $f(x)$ になるような関数 $F(x)$ を $f(x)$ の原始関数と言う。 前半は簡単な具体例です。後半は原始関数が初等関数で表せない具体例を紹介します。 簡単な具体例 $x^3$ を微分すると $3x^2$ なので $F(x)=x^3$ は $f(x)=3x^2$ の原始関数(の一つ)。 $x^3+100$ を微分すると $3x^2$ なので $F(x)=x^3+100$ は...
View Articleガウス整数とその応用
整数 $a,b$ を用いて $a+bi$ と表される複素数をガウス整数(複素整数)と呼ぶ。 関連する用語 ガウス整数全体の集合をガウス整数環と言います。 「ふつうの」整数を有理整数と言うこともあります。また,有理整数全体の集合を有理整数環と言います。 ガウス整数における倍数,約数の定義は有理整数の場合と同様です。つまり,ガウス整数 $a,b$ に対して $a=bc$ となるガウス整数 $c$...
View Article単項式,多項式,整式
単項式,多項式,整式という用語について。および,多項式と間違えやすいけど多項式でないものについて。 流儀1(主に高校数学) 単項式 数,文字,およびそれらの積として表される式のこと。 例: $3.14$,$x$,$2xy^2$,$3abc$ 数の部分を係数,かけあわされている文字の個数(種類数ではない)を次数と言います。 例: $2xy^2$ の係数は $2$,次数は $3$。 多項式...
View Articleブライスのパラドックス
ブライスのパラドックス(Braess’s paradox): 移動時間短縮のために新しい道路を作った結果,移動時間がかえって長くなってしまうことがある。 問題設定 $S$ から $T$ に $10$ 人の人が移動する。 $A$ を経由する経路と $B$ を経由する経路の2通りある。各々好きなルートを選べる。 $S\to B$,$A\to T$ の移動には $10$ 分かかる。 $S\to...
View Article計算ミスを減らすための4つの方法
計算ミスを完全になくすことはできませんが、減らすための努力は大事です。具体的な方法を 4 つ紹介します。自分に合いそうなものだけでよいので実践してみてください。 計算ミスを記録する 自分がやらかした計算ミス(他の凡ミスも含む)を,専用のノート(メモ)に簡潔に記録します。 例 ミスの概要,ミスの詳細,正しい計算 符号ミス, $x-(-2x)=-x$,$x-(-2x)=3x$...
View Article複素数の範囲での因数分解の例題4問
与えられた多項式を「○○の範囲で因数分解する」とは,○○係数の多項式の積に(できるだけ細かく)分解するという意味。 (○○には複素数,整数,有理数,実数などが入る) 因数分解の問題で特に指示がない場合は「整数の範囲で」因数分解すればOKですが,この記事では複素数の範囲での因数分解について考えます。 因数分解の方法 二次多項式 $x^2+ax+b$ は, $x^2+ax+b=0$ の解を $x_1,...
View Article順列と組合せの違いと例題
順列:順番を区別する 組合せ:順番を区別しない 前半は順列,組合せの意味。後半は練習問題です。 順列(パーミュテーション)の意味 $m$ 個のものから $n$ 個を選んで並べたもの(順列)の総数を ${}_m\mathrm{P}_n$ と書きます。 例題1 $3$ 枚の異なるカード A,B,C から $2$ 枚選んで並べる場合の数を求めよ。 ABとBAは順列としては別物です。 解答...
View Article音階と数学
(平均律における)音階と周波数比について。等比数列,累乗根という数学の基本的な道具が登場します。 音階と周波数(平均律) ある「ド」の音の周波数を $f$ とすると,その1オクターブ上の「ド」の音の周波数は $2f$ になります。そして,その間を(比の意味で)12等分し,間の音を定めます。公比が $\sqrt[12]{2}$ の等比数列です! 音階 周波数 近似値 ド...
View Article三角形の中心(36個)を図示してみた
三角形の中心としては,五心(外心,内心,重心,垂心,傍心)が有名ですが,実は他にもたくさんあります。 ETCというサイトに,9500以上の中心が載っています! その中でも有名なもの,僕が好きなものなどを 36 個選んで図示してみました。 三角形の中心の図 正三角形から徐々に形を変化させています。なお,中心の位置は上記のサイトの重心座標の情報をもとに,直交座標に変換してプロットしています。...
View Article連立漸化式の3通りの解き方
連立漸化式: $a_{n+1}=Aa_n+Bb_n$ $b_{n+1}=Ca_n+Db_n$ の3通りの解き方を,例題を通じて解説します。 三項間漸化式に帰着させる方法 $a_n$,$b_n$ のいずれか片方を消去することで,三項間漸化式に帰着させます。自分は高校時代,この解法を使っていました。 例題 $a_1=2$,$b_1=-1$ のもとで,連立漸化式 $a_{n+1}=3a_n+b_n$...
View Article双曲線関数の加法定理とその証明
1: $\sinh (x+y)=\sinh x\cosh y+\cosh x\sinh y$ 2: $\sinh (x-y)=\sinh x\cosh y-\cosh x\sinh y$ 3: $\cosh (x+y)=\cosh x\cosh y+\sinh x\sinh y$ 4: $\cosh (x-y)=\cosh x\cosh y-\sinh x\sinh y$ 5: $\tanh...
View Article分母の有理化のいろいろな例題
分母にルートや累乗根が入った式を有理化する方法,および例題を解説します。 なお,この記事では $a,b,c,d$ は有理数とします。 ルートが入った式の有理化(中学数学レベル) 例題 分母を有理化せよ。 (1) $\dfrac{1}{\sqrt{2}}$ (2) $\dfrac{3}{\sqrt{5}+\sqrt{2}}$ (3) $\dfrac{4}{1+\sqrt{2}+\sqrt{3}}$...
View Article複素数平面の問題(2016年東大理系第4問)
2016年東大理系第4問を解説します。 問題と解答 新課程になってからはじめて,東大で複素数平面の問題が出題されました。 問題 $z$ を複素数とする。複素数平面上の三点 $A(1)$,$B(z)$,$C(z^2)$ が鋭角三角形をなすような $z$ の範囲を求め,図示せよ。 解答 $AB=|1-z|$ $BC=|z-z^2|=|z|\cdot |1-z|$...
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